みまもりコラム

【地域で見守る】高齢者見守り協定とは?安心をつなぐ支援のしくみ

「近所に一人暮らしの高齢者がいるけれど、何かできることはないだろうか」「地域全体で高齢者を支える仕組みがあればいいのに」そんな思いを抱いたことはありませんか?高齢化が進む現代において、家族だけでは高齢者の安全を守りきれない状況が増えており、地域全体での支援体制が求められています。

そんな中で注目されているのが「高齢者見守り協定」です。これは、自治体と民間企業、地域団体が連携して、日常業務の中で高齢者の異変に気づいた際に適切な対応を行う仕組みです。郵便配達員、宅配業者、コンビニ店員、銀行員など、日常的に地域を回る職種の方々が「見守りの目」となることで、公的サービスだけでは手の届かない細やかな安全網を構築しています。

近年、この協定を締結する自治体と企業の数は急速に増加しており、2024年から2025年にかけても多くの新しい協定が誕生しています。地域密着型の金融機関から薬局、食品配達業者まで、多様な業種が参加することで、重層的な見守り体制が実現されています。

この記事では、高齢者見守り協定の基本的な仕組みから具体的な取り組み事例、活用方法まで詳しく解説し、地域で支え合う新しい形の高齢者支援について紹介します。

Table of Contents

高齢者見守り協定とは?

協定の基本概念と目的

見守り協定の定義

高齢者見守り協定とは、自治体と民間企業や団体が連携して、日常業務を通じて高齢者の安否確認や異変の発見を行い、必要に応じて適切な機関に通報する仕組みを定めた協定です。 正式には「高齢者の見守り活動に関する協定書」などの名称で締結されることが多く、地域の実情に応じて内容がカスタマイズされています。

この協定の最大の特徴は、特別な見守り活動を新たに行うのではなく、既存の業務の中で自然に高齢者の様子を気にかけるという点です。配達業務、営業活動、店舗運営などの日常業務を行いながら、「いつもと様子が違う」「しばらく姿を見ていない」といった変化に気づいた際に、適切な連絡を行う仕組みとなっています。

社会的背景と必要性

高齢化率29.1%を超える日本では、一人暮らしの高齢者や高齢者のみ世帯が急速に増加しています。家族による見守りが困難なケースが増える中で、行政サービスだけでは限界があり、地域全体での支援体制の構築が急務となっています。

特に都市部では近隣関係の希薄化が進み、従来の地域コミュニティによる自然な見守りが機能しにくくなっています。一方で、宅配や訪問販売、公共料金の検針など、様々な業務で地域を巡回する事業者は増加しており、これらの「地域を回る目」を活用した見守り体制の構築が注目されています。

法的根拠と制度的位置づけ

地域包括ケアシステムとの関連

見守り協定は、厚生労働省が推進する地域包括ケアシステムの重要な構成要素として位置づけられています。医療、介護、予防、住まい、生活支援の5つの要素を地域で包括的に提供する仕組みの中で、「生活支援」の分野における民間との連携施策として期待されています。

自治体の条例との関係

多くの自治体では、高齢者の福祉に関する条例や地域福祉計画の中で、民間事業者との連携による見守り体制の構築を明記しています。見守り協定は、これらの計画を具体化する手段として活用されており、法的な裏付けを持った取り組みとして実施されています。

協定の種類と形態

業種別協定

特定の業種に特化した協定で、その業種の特性を活かした見守り活動を定めています。例えば、郵便事業者との協定では毎日の配達業務を通じた見守り、金融機関との協定では窓口利用時の様子確認など、業務の特性に応じた内容となっています。

包括連携協定

2024年8月に締結された千代田区と日本郵政・日本郵便の三者協定のように、 高齢者見守りだけでなく、災害対応、子どもの見守り、地域活性化など複数分野にわたる包括的な連携協定も増加しています。これにより、より広範囲で継続的な地域支援が可能になっています。

地域特化型協定

特定の地域や住宅団地に特化した協定で、その地域の課題に応じた詳細な取り組みを定めています。高齢化率が特に高い地域や、過疎地域での移動販売業者との協定などがこれにあたります。

見守り協定の仕組みと参加者の役割

見守り協定の効果的な運用のためには、参加する各主体の役割を明確にし、連携の仕組みを整備することが重要です。

自治体の役割と責任

協定の枠組み策定

自治体は見守り協定の基本的な枠組みを策定し、参加事業者との調整役を担います。協定書の作成、参加事業者の募集、研修の実施、情報共有システムの構築など、協定運用の基盤整備が主な役割となります。

中央区の「高齢者の見守り活動に関する協定書」では、 通報フローの明確化、情報共有の方法、個人情報保護の取り扱いなどが詳細に定められており、他自治体のモデルケースとなっています。

連絡窓口と対応体制

見守り協定事業者からの通報を受ける窓口の設置と、通報内容に応じた適切な対応体制の構築も自治体の重要な役割です。通報の受付時間、緊急度の判断基準、関係機関との連携方法などを明確に定め、迅速かつ適切な対応を確保します。

多くの自治体では、地域包括支援センター、高齢福祉課、場合によっては消防や警察との連携体制を構築し、24時間対応可能な仕組みを整備しています。

参加事業者の役割と活動内容

日常業務での見守り活動

参加事業者の基本的な役割は、通常の業務を行いながら高齢者の様子に気を配ることです。特別な見守り活動を行うのではなく、日常業務の中で「いつもと違う」変化に気づいた際に、適切な機関に連絡することが求められます。

具体的な見守りポイントとしては、以下のような項目が設定されることが多いです:

  • 新聞や郵便物がたまっている
  • 洗濯物が長期間干されたまま
  • 電気がつけっぱなし、または長期間ついていない
  • 室内から異臭がする
  • 呼びかけに応答がない

研修への参加と情報共有

協定参加事業者には、適切な見守り活動を行うための研修への参加が求められます。高齢者の特性理解、認知症への対応方法、通報の判断基準、個人情報保護などについて学び、質の高い見守り活動を実施できるよう準備します。

具体的な参加事業者と特徴

郵便・宅配事業者

日本郵便との包括連携協定は全国の都道府県・市区町村で広く締結されており、 毎日の配達業務を通じた見守り活動の代表例となっています。配達員は担当地域を熟知しており、住民の生活パターンを把握しているため、異変の発見に適した職種です。

配達時の不在票の蓄積、ポストからの郵便物の溢れ、玄関周辺の異常などを通じて、居住者の安否確認を行います。

金融機関

2024年6月に締結された東京東信用金庫と船橋市の協定のように、 地域密着型金融機関の参加も増加しています。窓口での顧客対応、ATM利用時の様子確認、営業活動での訪問時など、多様な接点を通じた見守りが可能です。

特に高齢者の金融取引には詐欺被害のリスクもあるため、異常な取引パターンの発見や相談対応なども重要な役割となります。

小売・薬局事業者

2025年1月に締結された藤沢市と中北薬品の協定のように、 薬局や小売店との連携も拡大しています。日常的な買い物での様子確認、処方薬の受け取り頻度の変化、店舗利用パターンの変化などを通じて、健康状態や生活状況の変化を把握できます。

公共料金関連事業者

電力会社、ガス会社、水道事業者なども重要な参加主体です。検針業務、料金収集、設備点検などの機会を通じて、居住者の生活状況を確認し、異変があれば適切に通報します。

使用量の急激な変化(電気・ガス・水道の使用停止や異常増加)は、健康状態や生活状況の変化を示す重要な指標となります。

情報共有と連携の仕組み

通報システムの構築

効果的な見守り協定の運用には、迅速で確実な通報システムが不可欠です。多くの自治体では、専用の通報窓口(電話番号)の設置、24時間受付体制の構築、緊急度に応じた対応フローの明確化を行っています。

個人情報保護の仕組み

見守り活動で得られる情報には個人のプライバシーに関わる内容が含まれるため、適切な個人情報保護の仕組みが重要です。 協定書には情報の取り扱い方法、第三者への提供制限、保管期間などが明記され、参加事業者には個人情報保護に関する研修も実施されます。

協定の導入メリットと実際の取り組み

見守り協定の導入により、地域社会には多面的なメリットがもたらされています。実際の取り組み事例を通じて、その効果を具体的に見ていきましょう。

地域社会へのメリット

重層的な見守り体制の構築

複数の事業者が参加することで、時間帯や曜日を問わない重層的な見守り体制が構築されます。 郵便配達は平日の日中、コンビニは24時間、薬局は平日夕方まで、というように、様々な時間帯での見守りが可能になり、見守りの空白時間を最小限に抑えることができます。

また、業種により接触する高齢者の層も異なるため、より幅広い高齢者を見守り対象とすることができます。

早期発見・早期対応の実現

協定により構築された見守り体制は、高齢者の異変や緊急事態の早期発見につながっています。実際に、配達員が異変に気づいて通報した結果、倒れていた高齢者が早期に救助されたり、認知症による徘徊を未然に防いだりする事例が多数報告されています。

参加事業者へのメリット

地域貢献とCSR活動

見守り協定への参加は、企業の地域貢献活動として位置づけられ、CSR(企業の社会的責任)の観点からも価値があります。地域社会からの信頼向上、企業イメージの向上、従業員の社会貢献意識の向上などの効果が期待されます。

地域との結びつき強化

協定参加により地域とのつながりが深まり、長期的な事業展開にもプラスの効果をもたらします。地域住民からの信頼獲得、口コミによる顧客拡大、地域イベントへの参加機会増加などが報告されています。

具体的な成功事例

郵便配達による救命事例

ある地域では、郵便配達員が数日間郵便物がたまっていることに気づき、自治体に通報しました。職員が確認に向かったところ、高齢者が室内で転倒して動けない状態で発見され、迅速な救助により大事に至らずに済んだという事例があります。

この事例では、配達員の的確な判断と迅速な通報、自治体の適切な対応により、最悪の事態を回避することができました。

金融機関による詐欺被害防止

地域金融機関の窓口職員が、高額な現金引き出しを頻繁に行う高齢者の異変に気づき、 見守り協定に基づいて自治体に相談したところ、振り込め詐欺の被害を未然に防ぐことができた事例もあります。

金融機関特有の専門性を活かした見守り活動により、経済被害の防止という新たな効果も確認されています。

薬局による健康状態の変化発見

薬局との見守り協定では、処方薬の受け取り頻度や来店パターンの変化から、健康状態の変化を早期に発見する事例が報告されています。定期的に来店していた高齢者が長期間来店しなくなった際に、薬剤師が自治体に連絡し、体調不良で自宅療養していることが判明し、適切な医療・介護サービスにつなげることができました。

地域活性化への効果

コミュニティ意識の向上

見守り協定の実施により、地域全体で高齢者を支えるという意識が醸成され、コミュニティ全体の結束力が向上する効果も報告されています。事業者だけでなく、一般住民の見守り意識も高まり、近隣での自然な声かけや気遣いが増加する傾向が見られます。

世代間交流の促進

見守り活動を通じて、若い世代の従業員と高齢者との交流が促進され、世代間の理解が深まる効果も期待されています。これにより、高齢者の孤立感の軽減と、若い世代の高齢者理解の向上が同時に実現されています。

見守り協定を活用するためのポイント

見守り協定の効果を最大化し、持続可能な運用を実現するためには、いくつかの重要なポイントがあります。

効果的な協定設計

明確な役割分担と責任範囲

協定の成功には、参加する各主体の役割と責任範囲を明確に定めることが不可欠です。 自治体、参加事業者、地域住民それぞれが何をすべきか、どこまでが責任範囲かを具体的に示すことで、混乱を避けながら効果的な活動を実現できます。

特に、通報の判断基準、対応の優先順位、個人情報の取り扱い方法については、詳細なガイドラインを作成し、関係者全員が理解できるよう徹底することが重要です。

地域特性に応じたカスタマイズ

地域の高齢化率、住環境、既存の支援体制、参加可能な事業者の状況などを踏まえ、その地域に最適な協定内容を設計することが重要です。都市部と農村部、新興住宅地と伝統的な住宅街では、必要な見守り体制や効果的な手法が異なるため、画一的な協定ではなく、地域特性を反映した内容とする必要があります。

参加事業者の確保と育成

多様な業種の参加促進

効果的な見守り体制を構築するためには、できるだけ多様な業種の事業者に参加してもらうことが重要です。配達業者、小売店、金融機関、公共料金事業者、医療機関、介護事業者など、様々な接点を持つ事業者が参加することで、見守りの網の目を細かくすることができます。

継続的な研修と情報共有

参加事業者のスキル向上と意識維持のために、定期的な研修や情報共有の機会を設けることが重要です。高齢者の特性や認知症への理解、適切な声かけの方法、通報すべき状況の判断基準などについて、継続的な学習機会を提供します。

住民理解と協力体制

地域住民への啓発活動

見守り協定の効果を高めるためには、地域住民の理解と協力が不可欠です。 協定の目的や内容について住民に周知し、プライバシーに配慮した適切な見守り活動であることを理解してもらうことが重要です。

また、住民自身も日常生活の中で気づいた変化を適切に通報できるよう、通報先や通報基準について広く啓発することが効果的です。

高齢者本人の理解促進

見守りの対象となる高齢者本人にも、協定の趣旨や内容について理解してもらうことが重要です。「監視されている」という不快感を抱かせることなく、「地域全体で支えられている」という安心感を持ってもらえるよう、丁寧な説明と配慮が必要です。

運用体制の整備

24時間対応体制の構築

高齢者の緊急事態は時間を選ばないため、可能な限り24時間対応できる体制を整備することが重要です。 夜間や休日の通報受付体制、緊急時の駆けつけ体制、関係機関との連携体制などを整備し、いつでも適切な対応ができるよう準備します。

定期的な効果測定と改善

協定の効果を定期的に測定し、必要に応じて内容や運用方法を改善することが持続可能な運用につながります。通報件数、対応事例、参加事業者の満足度、地域住民の評価などを定期的に調査し、PDCAサイクルを回しながら協定をより良いものに発展させていきます。

関係機関との連携強化

医療・介護機関との連携

見守り協定で発見された高齢者の課題に対して、適切な医療・介護サービスにつなげるためには、地域の医療機関や介護事業者との連携が重要です。地域包括支援センター、かかりつけ医、訪問介護事業者などとの連携体制を構築し、発見から支援までの一連の流れを整備します。

警察・消防との連携

緊急時の対応において、警察や消防との連携は不可欠です。見守り協定の枠組みと緊急時対応の手順を事前に調整し、迅速で効果的な救助・支援活動ができるよう準備しておくことが重要です。

まとめ

高齢者見守り協定は、地域社会全体で高齢者を支える新しい仕組みとして、全国各地で急速に普及しています。自治体と民間事業者が連携し、日常業務を通じて自然な見守り活動を行うことで、公的サービスだけでは手の届かない細やかな安全網を構築することができます。

協定の成功要因は、明確な役割分担、地域特性に応じた設計、多様な事業者の参加、継続的な研修と改善にあります。 2024年から2025年にかけても、金融機関、薬局、配達業者など様々な業種との新しい協定が生まれており、見守り体制はより重層的で効果的なものに進化しています。

また、単なる安否確認にとどまらず、詐欺被害の防止、健康状態の変化の早期発見、地域コミュニティの活性化など、多面的な効果をもたらしていることも確認されています。これらの成果は、協定が単なる制度として機能するだけでなく、地域社会の絆を深める役割も果たしていることを示しています。

今後さらに高齢化が進む中で、見守り協定は地域包括ケアシステムの重要な構成要素として、その役割はますます重要になっていくでしょう。地域の実情に応じた協定の設計と運用により、高齢者が安心して暮らせる地域社会の実現に向けて、 自治体、事業者、住民が一体となった取り組みが期待されています。

見守り協定は、技術的な見守りシステムとは異なる「人と人とのつながり」を基盤とした支援の仕組みです。この温かみのある見守り体制を通じて、高齢者の尊厳を保ちながら安全で豊かな生活を支援し、誰もが安心して暮らせる地域社会の構築を目指していくことが重要です。

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株式会社サンケア
代表 山下裕子

私たちは、香川県さぬき市で2010年から訪問介護センターとデイサービスを運営しています。

社名「サンケア」は、「我が心で介護を行う」という思いを込めて名付けました。訪問介護やデイサービスを提供する中で、だれもが「大切な時間を自分らしく生きられるようにお支えしたい」という 思いが強くなっていきました。

「今は自立していても、不安なときには誰かに見守ってほしい」そのような方からの声が、寄り添いサービス「サンラブライン」の立ち上げのきっかけです。一人一人の人生を大切に、充実した毎日を 過ごしてもらえるようサポートしていきます。一人暮らしに不安を感じている方、一人暮らしの親を心配する方、お気軽にご相談ください。

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